ベトナム個人所有のコンドミニアムの売買手続き

                                                            2021年7月2日

 弊社では不動産仲介事業も行っていることから、外国人が所有するコンドミニアムの売却案件の手続き支援をすることがあります。売買をするうえで不動産所有権証明書(ピンクブック)の存在が条件のように規定されていますが、事実上発行されておらず(外国人投資家には長期間発行されてない状況)、ピンクブックなしでの売買が実行されています。このように不明確な面が非常に多い取引ですので、慎重にご検討いただく必要があります。

1)中古物件を購入する場合の注意点

 コンドミニアムの売却は、外国人でもベトナム人でも可能ですが、中古物件の購入は外国人からでないとできません。元の所有者に定められた所有年数の期限も引き継がれることになります。例えば50年所有権の物件を10年後に購入したら、残りが40年ということになります。

2)売却時の注意点

 ベトナムでは不動産は夫婦の共有財産になります。外国人に対してもこの規定があてはまります。結婚している人は、売却時に夫婦両方の署名が必要になります。独身者の場合でも、独身であることを証明する必要があります。結婚しているか、していないかを証明するためには、日本の戸籍謄本(原本)によって証明します。

3)所有権の移転時期

 デベロッパーから購入する場合は、買主が購入代金を支払い、物件の引き渡しが完了し、サインをした時点で所有権が移転されたとみなされています。ピンクブックの発行時に残金の5%を支払い、購入代金が完済することになっていますが、ピンクブックが発行されていない現状から、事実上所有権の移転は引渡し時期とみなされています。

 中古物件の所有権の移転は、売買契約締結後、デベロッパーを通じて建設局のウェブサイトに掲載する情報を通知することにより移転手続きが可能です。

4)必要な書類

 所有者から第三者に売却する手続きを支援する場合は以下の書類を準備いただいております。

〇売り主側が提出すべき書類

 ・不動産購入契約書

 ・購入資金支払時の領収書

 ・物件引渡し証明書

 ・売主とその配偶者のパスポートコピーの公証・認証版

 ・婚姻届提出の配偶者が記載されている戸籍謄本(独身の場合も必要)

 ・配偶者による個人財産確約書(所有者の財産であることを承知していることを確約する書面)

 ・手続きなどをベトナム在住者に委任する場合は公証認証した委任状

 上記以外にも必要な書類が追加されることがあります。また、手続きが変更になる場合もございますので、事前に専門機関にご確認ください。

 日本の場合は、日本で発行される書類等については、公証役場(法務局公証と外務省の英文公証の両方が必要)での公証後、ベトナム大使館(領事館)で認証された書類が有効書類とみなされます。

5)資金の受領等

 売買契約によって受領した資金は、ベトナムの税法に則って税金を適切に納める必要があります。納税したことを証明することにより、海外送金する権利が発生します。ただし、取り扱いはベトナムの金融機関により異なっておりますので、非居住者口座のあるベトナムの金融機関に確認する必要があります。せっかくベトナムで利益を得たとしても送金できない場合もありますのでご注意ください。手続きは簡単ではありませんので事前にご確認ください。

 納税を行った後に、外貨に両替して現金で持ち出しをする場合、その他の現金と合算して上限は5000USDまでしか認められていませんので、ご注意ください。不動産売買については、今までの弊社での取り扱いの経験をもとに記載をしていますが、法令で明確に定められていないことが多いため注意が必要です。

以上

投稿者プロフィール

西田 俊哉
西田 俊哉
アイクラフトJPNベトナム株式会社・代表取締役社長。
大手生命保険会社に23年の勤務を経て、2005年に仲間とベンチャーキャピタル・IPO支援事業の会社を創業し、2007年に初渡越。現在は会社設立、市場調査、不動産仲介、会計・税務支援などを展開。