残業時間の引上げ(2022年4月~)と残業代の計算方法

1)残業時間上限を40時間/月から60時間/月に引き上げ(4月1日発効)

 2022年3月のベトナム国会常務委員会で労働者の残業時間の1か月と年間の上限の変更の決議が採択されました。4月1日から発効しますが、1年間の残業の規定は1月1日に遡って発効されます。

〇 使用者と労働者の同意がある場合、1年間の残業時間の上限は現行の200時間から300時間に引き上げることができます。その場合、月の残業時間は40時間から60時間に引き上げることができます。

 ただし、以下の者は引き上げ対象者からは除外されます。

・15~19歳未満の労働者

・51%以上の労働能力が失われた障害のある労働者(障害の定義については個別にご確認ください)

・重労働・有害・危険な業種の労働者(業種の定義については個別にご確認ください)

・妊娠7か月以上の労働者、または高地・僻地・国境地域・島嶼で働く妊娠6か月以上の労働者(地域の定義についても個別にご確認ください)

・生後12か月未満の乳児がいる女性労働者

2)残業代の計算方法

 一般的には設定された時間のしきい値(閾値)を超えて働くことが残業になります。所定の労働時間は労働法を順守した前提のもとで、各企業によって就業規則で明示されているものが基準になります。法律では1日8時間(休憩時間は除く)、週48時間の上限が決まっていますので、それを超える労働時間の設定はできません。それを超える場合が残業と定義されます。

 また、勤務時間の超過については、就業規則で勤務日と指定された日あるいは曜日(以下、「平日」という)、就業規則で休日と規定されている日(以下、「週末」という)、ベトナム政府が指定した休日およびいわゆる慶弔休暇にあたる労働法第115条に規定された休暇時での出勤(以下、「祝日」という)、22時~翌朝6時までの勤務(以下、「深夜」という)によって計算上の割増しが異なります。

 計算の基本となる平日の1時間の給与については以下の計算方法になります。

 各月の基本給÷会社が定める月平均の勤務時間=1時間の基本給(以下、「時間給」という)

〇加算しなければならない基準

 ・平日の残業 150% (深夜時間22時~翌朝6時)以外の時間外労働

 ・週末(企業が設定した休日)の就業時間内出勤 200%

 ・祝日の就業時間内出勤 300%

  • 平日の残業代の計算

時間給×残業時間×150%

深夜残業がある場合の加算

時間給×残業時間×150%+時間給×深夜残業時間×20%

*上記残業時間 普通の残業時間+深夜残業時間

(A´) 平日シフト勤務の深夜労働の加算

平日の深夜労働(22時~6時の勤務、残業ではない勤務)

(時間給+時間給×30%)×深夜労働時間

  • 週末の残業代の計算

週末の時間給×残業時間×150%

深夜残業がある場合の加算

週末の時間給×残業時間×150%+週末の時間給×深夜残業時間×20%

*週末の時間給とは時間給×200%にしたもの

  • 祝日・有給休暇取得時の出勤の残業代の計算

時間給×300%×労働時間

深夜残業がある場合

祝日の時間給×残業時間×150%+祝日の時間給×深夜残業時間×20%

*祝日の時間給とは時間給×300%にしたもの

 なお、個人所得税の計算に使用する所得金額には、残業代の割増しは含みません。残業代の中で時間給×労働時間の部分のみが加算されます。

以上

投稿者プロフィール

西田 俊哉
西田 俊哉
アイクラフトJPNベトナム株式会社・代表取締役社長。
大手生命保険会社に23年の勤務を経て、2005年に仲間とベンチャーキャピタル・IPO支援事業の会社を創業し、2007年に初渡越。現在は会社設立、市場調査、不動産仲介、会計・税務支援などを展開。