西田俊哉のベトナム・フォー・パラダイス(2021年1月投稿分)

 2021年1月14日

地球史における日本列島の成り立ちから、日本の特異な役割を考える

1、2021年を迎えて思う日本列島のこと

 2021年新型コロナの感染拡大で、1月7日にも首都圏の一都三県で緊急事態宣言が発出されました。関西の2府1県も追加される見通しです。未曽有の災難が日本のみならず世界を覆っています。今年の正月は特別の正月でした。通常は日本に帰省する時期ですが、様々なことを考慮すると日本への帰国はできそうもありません。ベトナムに戻るためには強制隔離と多額の費用が必要です。そのような理由で当面は日本への帰国は断念せざるを得ません。しばらくは家族にも会えない状態が続きます。日本になかなか帰れないことから、逆に望郷の念が強くなることがあります。コロナ禍の状況で、仮に感染したら悲惨な隔離施設に送り込まれることになりますが、それも覚悟をしなければなりません。

そんな不安を抱きながら何気なく見ていたテレビ番組がありました。NHKワールドプレミアム(日本ではNHK Eテレの番組ですが、海外向けにNHKのいろいろのチャンネルからアレンジした番組を配信しています)の「又吉直樹のヘウレーカ」という番組です。ヘウレーカとは、「わかった」」という意味で、アルキメデスがその名前がついた原理を発見した時、「ヘウレーカ」と叫び裸で飛び出した逸話が有名です。

番組の話に戻りますが、その日の番組のサブタイトルは、「和食がうまいは、マグマのおかげ?」です。出汁(だし)がきいたお吸い物に、ホタルイカやマグロの海の幸。なぜ、和食がそれほどまでにおいしいのかの秘密を、マグマ学が専門の神戸大学巽好幸教授が徹底分析、との触れ込みでした。おいしさは日本列島の成り立ちに関係がある、というテーマの番組でした。美食と地質学の妙な取り合わせに思わず深く入り込んでいました。今回は日本列島の成り立ちにちょっと触れてみます。

放送の内容は大部分を忘れてしまいましたが、触発させられた部分があったので、自分なりに調べたうえで、日本列島のことから話を進めようと思います。なぜ海の幸がおいしいのは、地球の奥深くにあるマグマが関係するかというと、地形が起伏に富んでいることが影響しているのです。例えば、富山湾のホタルイカがおいしい理由は、深海魚のホタルイカが取れるためには深い地溝のある富山湾だからとのことでした。太平洋側は深くなっていることは想像できますが、日本海が深いのは意外です。出汁(だし)の元になる昆布を煮詰める水は日本の軟水の方がまろやかになるようです。日本の水が軟水なのは川の流れが速く、鉱物などが簡単に混ざらないからのようです。食べ物がおいしい由縁は、世界のどこよりも起伏に富んでいるからというのは知りませんでした。なぜ起伏に富んでいるかは、日本列島誕生の秘密にその理由が隠されています。

2、超大陸パンゲアの分裂

話は地球の歴史にさかのぼります。太古の地球には巨大大陸パンゲアの時代がありました。ベルム紀、三畳紀と言われる頃です。地球の大陸は一つにつながっていました。そこからどんどん分かれていきました。有名な話があります。アフリカの西海岸と南アメリカのブラジル側の地形が合わせるとぴったり重なると言うのです。かつてはつながっていたと考えられています。

なぜ、大陸が分かれていくのでしょうか?それはプレートと関係があるようです。本来、地球以外の惑星のプレートは一つにつながっていると言います。地球だけはいくつかのプレートに分かれています。理由は水があるからのようです。水の影響で一つだったプレートが割れていったのだそうです。プレートの隙間にはマグマがたまり、その地殻変動のためにプレートが徐々に移動していきます。

ベルム紀という時代はちょっと知っておいた方がいいかと思います。地球上で大量絶滅の発生し時代です。地球の大量絶滅は少なくとも5回あったと言われていますが、その最大級の大量絶滅があったのがベルム紀です。5つのうちの一つは恐竜の絶滅した時期で、最も新しい大量絶滅です。その原因は地球に衝突した巨大隕石が原因だと言われています。落下した隕石により、地球全体の気候変動によるものと言われています。その時の地層の境界をK/Pg境界と言われています。隕石による塵が大気を覆い、地球全体を覆い、「核の冬」と言われるような状態になったと言われています。

それよりももっと強烈な大量絶滅があります。微生物のみだった地球が全球凍結した時期です。その中で生き残ったのが、単細胞から多細胞に変貌できた生物です。多細胞に変貌に役に立ったのはコラーゲンでした。コラーゲンが細胞をつなげ、大型生物が誕生するきっかけになりました。その全球凍結が開けたとき、氷が水になり海ができたことにより、多様な生物が一斉に地球にあらわれたのが、カンブリア紀と言われる時代になります。カンブリア爆発と言われるこの時代は現在の生物につながる多様な生物が誕生しました。長く生き残っているゴキブリもトンボと並んで最も古い種です。カンブリア紀の約3億年前には地球に登場しています。どんなところでも生きられて、大量絶滅にも耐えた生命力抜群の昆虫です。

もう一つの大量絶滅があります。それは超大陸パンゲアの時代です。その時代のことをベルム紀と言います。この時代はシダ植物や裸子植物が隆盛した時代でした。カンブリア紀を経て動物も繁栄していました。ところがベルム紀終盤にスーパーブルームと言われる火山活動が地球全体で活発になりました。あちこちの火山が噴火していました。大規模な気候変動やメタンハイドレードの発生などの影響もあり、酸素が急減し95%程度の生物が絶滅したと言われています。大量絶滅の中でも最大規模の絶滅と言われています。その時の地層の境界をP-T境界と言います。その後三畳紀と続きますが、ジュラ紀になるとどんどん大陸が分裂を始めていきました。その時代が徐々にプレートが移動していった時期です。マグマの力で大陸が移動を始めたのです。日本列島の誕生には、超大陸パンゲア分裂の予備知識が必要です。

3、日本列島の誕生

超大陸パンゲアの分裂が日本列島の誕生にもつながります。従来日本はまだ大陸の一部でした。ロシア極東部のウラジオストクから朝鮮半島の部分につながっていました。それが徐々に大陸から分かれはじめ、日本海が形成されていきました。その後現在の日本列島に近い形状になっていきました。

 日本列島は、地質学的にはユーラシアプレートの東端および北アメリカプレートの南西端に位置します。この二つのプレートがせめぎ合っているのが中部山岳地帯です。それに太平洋側には、太平洋プレートとフィリピン海プレートの2つの海洋プレートが沈み込む運動をしているのが日本の周辺です。日本は4つのプレートによって絶えず地殻変動しています。私が調べた限りでは地球のプレートは日本周辺の4つとアフリカ、アラビア、インド・オーストラリア、ナスカ、南アメリカ、カリブ、ココス、南極の8つの合計12プレートです。そのほかの小規模なプレートもあります。大規模なプレートのうちで4つが日本周辺というのは驚きです。

現在の日本列島に当たる部分はもともとユーラシア大陸の東端の部分でしたが、後に日本海となるところは簡単に言うと地面が割れてできた海です。530万年前ころ大陸から切り離され、徐々に離れていき弧状列島になったと考えられています。日本列島のうち東日本は北アメリカプレート、西日本はユーラシアプレートに乗っています。世界の中でも日本は得意な地殻に存在する国と言えるでしょう。

日本列島の移動に深く関係しているのがマグマの発生と上昇です。この付近はプレートの沈み込みが起こっていますので、地殻変動が起きやすい地域です。大陸から分かれ始めた時期は、徐々にくぼ地や川や湖ができ、その周辺では像やシカが暮らしやすくなっていたと言います。その後、徐々に大地のくぼみが拡大して日本海になりました。冒頭でお話した富山湾の深海は、その大きな割れ目の跡だと言うのです。だから海が深く、マグマの影響を受けた地形のお蔭でおいしい魚が住んでいるのです。

日本列島が南北に長いのは大地が引っ張られて伸びたからだとも言います。また、日本の東日本の部分と西日本の部分は、別の島になっていたのが、プレートの移動に伴いぶつかり、ちょうどぶつかり合った中央部が中部山岳の地域になっています。黒部峡谷と北アルプスのあたりには標高1万mの巨大な高山があったとNHKの「ジオジャパン」という番組で見たことがあります。その地域が私の故郷の長野県を中心とした地域です。プレートがぶつかり合って隆起した山脈が、北アルプス、中央アルプス、南アルプスになったと言われています。

4、得意な地形が与えた日本の独特な文化

世界でも独特の近くを持った国が日本ですが、地震、津波、噴火などの自然災害が多いことはやむを得ないでしょう。自然が厳しい分、危機に対して事前に備える習慣が日本人には身についていると思います。ただ現代の疫病新型コロナに関しては、ベトナムの対策の徹底振りの方が際立っており、日本の対策は中途半端と見えなくもありませんが。

しかし、冒頭でお伝えした通り、海の幸、山の幸など食べ物に限られず風景も含めて、地形の厳しさが、逆に恵みを与えています。特別の美しさがある国であることには誇りを持ってもいいと思います。狭い国土でありながら、急峻な地形を持つ日本は、川はきれいで流れが速く、植物も紅葉するなど四季の美しさが際立っています。南北に長い国土はそれぞれの場所で自然の美しさや名産品が異なります。地震もありますが、火山国日本は、温泉などの恵みもあります。

そんな厳しい自然の中で生活をしてきた祖先たちは、「八百万の神」という自然信仰を生み出しました。世界三大宗教とビンズー教徒が世界で大半を占めているのに対しても、日本は独特です。諏訪大社の「御柱祭り」は、木の中にいる神様に感謝し、その木材を使って「大社」という人々の精神的支柱を作るための祭りです。古事記にも書かれている諏訪を支配することになるタケミナカタ(諏訪明神)は、出雲の大国主が高天原の天照の使者に国譲りを承諾した時、ただ一人反対し、天照の使者のタケミカヅチに戦いを挑んだが敗れ、諏訪に逃げてきたという物語になっています。

 その当時、縄文文化は青森の三内丸山遺跡が有名です。また、青森県木造の亀ヶ岡遺跡から発掘した遮光器土偶は宇宙人のような姿で有名です。そのようの縄文文化は北日本で栄えていました。北日本で栄えていた縄文文化ですが、徐々に気候変動の影響で移動せざるを得なかったようです。主食にしていた木の実が取れなくなり、南下して諏訪地方が縄文の最後の砦になりました。「縄文のビーナス」として有名な土偶も長野県諏訪地方の茅野市で出土したものです。

気候変動の影響もあり、縄文文化が継承されていた最終地点が諏訪地域でしたが、出雲からの渡来系・弥生系の文化と融合していく過程の中で古事記の逸話が生まれたようです。御柱に神が宿っているという思想は典型的に縄文の考え方です。それが弥生系の考えと交わっていくのも日本文化の特徴です。日本の地殻はユーラシアプレートと北米プレートが交わっていますが、その国土に住む日本人の礎は、東日本に基盤があった縄文系の人と大陸から渡来して西日本から勢力を広げた弥生系の人たちと二つの勢力が、最初は戦いつつもそのうちに融合した歴史です。

5、混とんとする世界の中の日本の役割

地球の歴史、日本列島の成り立ち、自然や食文化が素晴らしい日本を伝えてきましたが、現在社会に目を転じてみましょう。地球の歴史の長さに比べると一瞬の時間になるのですが、歴史の転換点と感じています。今回のアフターコロナは、もう元の世界に戻ることができないでしょう。地形の変化は長い時間をかけて変化するのですが、今回のコロナによる生活の変化、産業の変化は短期間の変化です。結果として、歴史の転換の扉を開ける出来事になるかもしれません。

 そう考えるのには私なりの理由があります。ベトナムにいる私がコロナ禍の影響で、日本との関係が希薄になったことはありません。なぜならば毎週何らかのWEB会議があります。ZOOMやSKYPEで簡単に会議ができます。ベトナムに渡航できない人に代わり、製造過程を動画で撮影して日本の方に見ていただいたこともありました。今までとはビジネスのやり方が変わり始めています。わざわざ移動しなくてもビジネスはできるのです。

また、先月お話をしましたが、昨年の12月スマートフォンを買った時にスマートフォンはアイフォン以外、中国、韓国、ベトナムで製造されたものばかりでした。アイフォンの部品の一部はベトナムでも生産しています。 製造拠点もアジアに移転してきています。タイでは自動車産業が盛んですし、ベトナムではスマートフォンの製造が急激に盛んになっています。インドでは鉄鋼や機械製造業などは盛んに取り組まれています。今までアメリカ、ヨーロッパ、日本で製造していたものがほかに移り始めています。コストも加味して適所で生産するようになっていいます。

また、IT技術者の育成、ITインフラの整備は新興国の方が進んでいるケースも見受けられるようになりました。何よりもWIFI環境などは、日本に比べるとベトナムをはじめASEANの国の方が便利と感じることもたくさんあります。SNSなどの利用者数は日本よりも多くいます。日本で使われているLINEがありますが、ベトナムにはZALOというものがあり、ユーザー数が12,000万人だと言われています。ベトナムの人口が9500万人なので、それよりも多くの人が利用しています。合わせてIT技術者の養成に国を挙げて取り組んでいます。経済は既に大きな転換点に入っています。

更に政治の面で見ても、先進国が行き詰っていることを感じます。世界のリーダーを自認していたアメリカですが、最近ほころびが目立っています。大統領選挙とその後のトランプ氏の言動で露呈したアメリカ社会の分断は今後も続く可能性があります。トランプ支持派と反トランプ派との距離は、日本列島が大陸から分かれたようにもう元には戻れないかもしれません。香港問題に対する強権的な中国の動きも不気味です。国際間でも覇権主義を強めていること、一帯一路政策によって、アジア、アフリカなど新興国を子分にしようとしているようにも見えます。その一方でイギリスのEU離脱を含めイスラムとの対決姿勢に傾斜していく中世のような様相を呈するヨーロッパは、存在感に陰りが出始めています。極東の先進国だった日本もヨーロッパの状況に似ているかもしれません。

世界は混迷を深めていますが、将来を暗く考えていない国もたくさんあります。伸び盛りの明るさがあるのはアジアの諸国です。世界で存在感を示し始めているのが、インド、東南アジアなどのアジアの新興国です。この流れはしばらく留まることはないと思います。世界経済において、アジアの勢力が拡大すると考えておいた方がいいです。逆に今まで世界のリーダーであった国が統一することが難しくなってきています。そのような超大国の影響力低下をにらんで、中国が突発的な動きをしないとも限りません。

先にも取り上げましたが、日本は地形的にも、歴史的にもほかの国とは違った魅力がある国です。今はコロナ禍ですから、国際交流には慎重にならざるを得ませんが、国際的に信頼される国になるためにどのような戦略を持つのかを決める重要な時期になっていると思います。自然、食文化を含めた文化遺産は世界に自信を持って発信できる日本ですが、新しい時代を生き抜く思想を生み出せる国になることができたら、一層魅力のある世界でも評価される国になると思います。少なくとも10月までには衆議院選挙があります。オリンピックが開催されるかはわかりませんが、将来の日本をどうするのか、また国際的にはどこの国と連携を取っていくのか、日本にとって大事な判断が迫られています。

以上

投稿者プロフィール

西田 俊哉
西田 俊哉
アイクラフトJPNベトナム株式会社・代表取締役社長。
大手生命保険会社に23年の勤務を経て、2005年に仲間とベンチャーキャピタル・IPO支援事業の会社を創業し、2007年に初渡越。現在は会社設立、市場調査、不動産仲介、会計・税務支援などを展開。