ベトナム不動産法制改正に関する情報(2024年8月施行に変更)

ここのところ各法律事務所からのニュースレターなどで、2025年1月1日施行予定の不動産法制の改正概要が送られております。直近のViet-Jo Newsによると前倒しで8月1日に施行されるとの記事がありました。今回、6月29日の国会で「土地法、不動産事業法、住宅法、金融事業法の一部改正・補足する法律」の施行により、ガイダンス文書を発行することなく、今年8月1日から施行する方向になったことが伝えられています。これを受けて、これらの情報を今回のメールマガジンで提供するべきかと考えました。詳しい内容はそれぞれ法律事務所にご確認いただく必要がありますが、私の方で重要と思われる点をまとめてみました。

今回まとめるにあたり参考にさせていただきましたのは、今年ホーチミン市にオフィスを開設された渥美坂井法律事務所からお送りいただいたニュースレターです。私がその要旨と思われるところを抜粋してまとめさせていただきました。文面は私の責任において記載をしておりますが、詳細のお問い合わせについては、以下の連絡先にご確認ください。

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 ベトナムプラクティスチーム

Email: ipg_vietnam@aplaw.jp

私なりの感想ですが、今回の改正はコロナ禍前後から発生している不動産事業者により不正行為、違法な社債発行などにも起因して、不動産関連事業の遅延や中止案件が増えております。それに伴い不動産関連事業が低迷し、ベトナム経済の低迷の一因にもなっているものと思います。今回の前倒しの施行は、景気低迷が続いているベトナム経済の回復を早めたい、との思惑があるように思います。

1)土地法の改正

(1) 外資系企業の定義の明確化

従来は外国資本の出資があれば、比率に関わらず外資系企業に該当すると実務上みなされていました。今回の改正では、「外国投資経済組織」という用語が使われています。

外国投資経済組織とは、外国投資家が定款資本の50%を超えて保有する場合等が該当すると考えられています。すなわち、外国投資家が50%を超えてない場合は、ローカル企業と同様に取り扱われるようです。今回の改正土地法では、従来の土地法ではできなかった土地使用権の譲受け等が、外国投資経済組織に該当しなければ可能になるということになります。

(2)土地使用料の一括払いと年間払い

土地使用料の支払い方法には一括払いと年間払いがあります。今回の改正土地法では、土地使用目的によっては、年間払いしか利用できない場合がある一方、年間払いの場合、譲渡に関する規定が若干緩和されています。

今回の改正で、土地使用料の一括払いを選択できるのは以下の場合になります。

・農業、林業、養殖業、製塩業への投資プロジェクト実施のための土地利用

・工業団地、産業クラスター、ハイテクパーク、工業団地内の労働者用宿泊施設としての土地利用

・公共事業用地の事業目的への利用、観光やオフィス事業活動のための商業・サービス用の土地使用

・住宅法に従った、賃貸社会住宅の建設用地としての土地利用

2)不動産事業法の改正

(1)外資系企業による事業範囲の拡大

土地法同様に外国投資経済組織に入らない企業は、従来外資系企業に制限されていた事業可能範囲に関する規制の適用を受けないことになります。

今回の改正でインフラを有する土地の土地使用権を譲渡、賃貸、転貸するための不動産プロジェクトにおけるインフラ建設の投資が新たに可能になります。

(2)未完成建物の取引

従来はデベロッパーが徴収できる手付金の金額に明確な制限がありませんでした。今回の改正では事前に徴収できる手付金の金額は販売価格の5%以下に限定されました。

3)住宅法の改正

(1)社債による資金調達

今までは資金調達の方法として明確でなかった社債の活用が明記されました。

(2)商業住宅投資のデベロッパー選定プロセスの変更

住宅用地を土地使用目的とする土地使用権を事前に取得する必要がありましたが、「適格な土地使用権」を有していれば足りることになりました。

(3)社会住宅確保要件の緩和

住宅用地の20%を社会住宅用地として確保することが求められていましたが、改正により投資家は以下のいずれかの義務を負うこととなり、必ずしも社会住宅用地を確保する必要はなくなりました。

・商業住宅投資プロジェクト内の土地の一部を社会住宅用地として確保す

 ること

・商業住宅投資プロジェクト外の場所に社会住宅用地を確保すること

・社会住宅建設のための土地価格相当額を支払うこと

以上