外国人労働者がベトナム社会保険等を掛ける必要がないケース
ベトナムで給与所得を得る労働者は強制保険(社会保険、健康保険、失業保険)の加入が義務付けられています。ただし、外国人駐在員は失業保険を除いた社会保険と健康保険に加入する必要がありますが、一定の条件を満たした外国人労働者は社会保険、健康保険の加入が免除されます。ここではその内容を解説します。
〇 社会保険の補償範囲(疾病手当、産休手当、労災・職業病手当、退職年金、遺族手当)
〇 健康保険(医療費の8割給付 ただし、医療保険適用可能な医療機関のみ対象)
〇 失業保険(加入期間に応じた期間、平均給与の60%を給付)
各保険料の算出に当たり、業績賞与、インセンティブ、食事代などの手当てを除いた総給与をもとに計算されます。会社負担、個人負担の割合は以下の通りです。
〇 社会保険 会社負担17.5%、個人負担8%
〇 健康保険 会社負担3%、個人負担1.5%
〇 失業保険 会社負担1%、個人負担1%
ただし、総給与の計算基礎賃金の上限が決められています。公務員の基礎賃金の20倍が上限として設定されていますが、2024年7月に改定され、2,340,000VNDに引き上げられました。2022年からの金額は1,800,000VNDでしたので、以下の計算式の通り金額上がりました。
保険料計算の上限額
234万VND×20倍=4,680万VND
その場合の会社負担額 959.4万VND 個人負担額 444.6万円
2024年7月からの上昇した差額
(234万VND-180万VND)×20倍=1,080万VND
最近、弊社が関わり労働許可を取得した日本人の場合、ベトナムの社会保険を掛ける必要がないケースと掛けなければいけないケースがありました。保険料金は比較的高額になることから、不要な保険料は掛けないですむようにすることが妥当と思います。掛ける必要がないケースを解説します。
〇 外国の親会社からベトナム子会社や駐在員事務所に出向(社内異動)するケース
〇 少なくとも直近12か月以上親会社での勤務が必要
以上の2つの条件を満たしている必要があります。しかし、注意しなければいけないケースがあります。親会社とは出資会社のことを指します。シンガポール、香港、タイなどの子会社が出資している場合、その会社の親会社(シンガポール、香港、タイなどの子会社にとって親会社にあたる企業のこと)とベトナムの現地法人(あるいは駐在員事務所)の関係性は親と孫になります。親会社とは出資会社になりますので、親会社から孫会社への出向(社内異動)は社会保険料、健康保険料の支払い免除に該当しません。また、親会社のグループ企業からの出向(社内異動)のケースも該当しません。
出向(社内異動)が認められるためには、労働許可を取得する際に出資会社からの出向(社内異動)であることを証明する文書を添付することが必要です。その書類を添付したうえで、労働許可証に社内異動と明記されている必要があります。