ベトナムでの外国資本の会社設立に関する情報
2021年12月20日
ベトナムでの外国資本の会社設立に関する情報
ベトナムで外国投資として会社を設立する場合の会社形態、会社設立の必要書類と手順、会社設立後に対応すべき内容、また投資制限分野、優先投資分野等の情報をまとめました。要点のみを記載しておりますので、詳しくは専門機関にご確認ください。
1、会社の形態
1)有限会社
(1)1人有限会社 出資者が1人(組織または個人)
主に親会社100%出資する場合が多い
(2)2名以上有限会社 出資者が2人以上(組織または個人)
主に2社以上が出資し合弁会社を設立する場合が多い。出資者の上限は50名 (社)まで。個人出資もあり。
2)株式会社
出資者が3名(社)以上の場合で、将来的に出資者が追加される可能性がある企業が採用する形態。
出資者は自分の出資分は譲渡が可能(創立3年未満は株主総会の承認が必要)
3)駐在員事務所
会社組織ではない。営業活動は行わず、情報収集、市場調査、委託先への支援、広報活動等を行うための事務所
*その他、一定の期間のみにプロジェクトを行うためのプロジェクト企業、建設分野の請負などの形態もある。
2、外資系企業の会社設立の流れ
1)投資登録証明書(IRC)の取得
外国人投資家がベトナムで会社設立をするためには、投資登録証明書(IRC)を取得する必要がある。投資登録するためには投資する企業の情報と諸資料を提出し、どのような事業を行うかを申請することになる。
2)企業登録証明書(ERC)の取得
投資登録証明書(IRC)の発行を受けたのちに、事業活動をする会社組織設立のための企業登録証明書(ERC)の発行を申請する。企業登録証明書(ERC)の発行後、事業活動をスタートできる。
3)事業ライセンスの取得
業種によっては企業登録証明書(ERC)の取得後に事業ライセンスの取得が必要な場合がある。この手続きの手順・期間はそれぞれ関係する法規に規定されている。
・レストラン事業 食品安全条件充足施設の証明書
・教育事業 設立許可決定、教育活動許可決定
・人材派遣業 人材派遣活動許可書
・人材紹介 人材紹介サービス許可書
・建設業 建設活動能力証明書 など
3、投資許可取得(会社設立)のための必要書類
投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)取得のためには、以下の書類を提出する。公証役場での公証やベトナム大使館での認証を必要とするものもある。
(1)投資登録申請書(ベトナム側2部)
(2)企業登録証明申請書(ベトナム側2部)
(3)登記簿謄本(投資企業側2部)
(4)会社定款(投資企業側2部)
(5)財務諸表(投資企業側2部)
(6)英文残高証明書(投資企業側2部)
(7)事務所の賃貸契約書(ベトナム側2部)
(8)貸主の事業ライセンス(ベトナム側2部)
(9)出資者及び出資者の代表者のパスポート写し(投資企業側2部)
(10)現地法人代表者のパスポート写し(2部)
4、企業登録証明書発行後の手続き等
1)会社印章の作成
会社印章の制作を業者に委託。会社の名称、企業番号の刻印が必ず必要。
2)会社設立の公示
国家企業登録情報サイトに掲載するため所在地の計画都市局に申請の義務。
3)銀行口座の開設
定款資本金の振り込み、国内外からの借り入れや支払い等のため、ベトナム国内の銀行において資本金口座と取引用の口座を開設する必要がある。開設して10日以内に計画投資局にその口座情報を通知し登録する。
また、定款資本金は90日以内に入金する必要がある。口座を開設する銀行はベトナム国内にある銀行であれば自由に決めることができる。
4)事業ライセンスの申請
業種によっては事業ライセンスの申請をしないと開始できない事業分野がある。
この取引用の口座も開設する必要がある。開設後所在地の計画投資局に口座情報を通知する義務がある。
5)VATインボイスの印刷
今までは税務当局からVATインボイスフォームの承認を取得した後に印刷会社に依頼した手書きのVATインボイス の使用も認められていた。しかし、財務省は電子インボイスの発行を推奨している。電子インボイスとはベトナム税務当局によって規定されている標準書式のインボイスを指す。財務省通達(78/2021 /TT-BTC)では、2022年7月1日以降、経済・社会状況の困難な地域における個人経営者・経営世帯は1回のみ12ヶ月の延期が認められるが、それ以外は電子インボイスの使用が義務付けられる。
6)ライセンスフィー(事業税)の申告と納税
(1)納付期限
企業登録証明書を発給した日から30日以内に納税しなければならない。
(2)納付金額
定款資本金100億VND超 300万VND
定款資本金100億VND以下 200万VND
ただし、政令(22/2020/ND-CP)によると新しく設立した企業は、初年度の納付が免除され、2年目以降支払う 必要があることに変更された。
7)外国人労働者の労働許可証の取得
・外国人採用の30日前までに外国人雇用が必要であることを説明する報告書の提出(労働局あるいは工業団地・経済特区の管理委員会)
・上記承認後、15営業日以内に労働許可の発給申請提出
8)賃金テーブルの作成
10名以上を雇用する場合は賃金テーブルを作成し労働局あるいは工業団地・経済特区の管理委員会に提出
9)強制保険(社会保険、健康保険、失業保険)の申告と納付
試用期間を除き3か月以上雇用する場合、加入の義務がある。親会社から転勤の外国人は対象外となる。その場合は事前に任命書の提出が必要となる。
10)就業規則の登録
10名以上を雇用する場合は就業規則を作成し、労働局あるいは工業団地・経済特区の管理委員会に登録
11)労働協約の送付(作成する場合)
雇用者と労働組合の間で交わされる労働、雇用条件、各当事者の権利などに関する合意書がある場合は、労働局あるいは工業団地・経済特区の管理委員会に提出
12)環境に関する各種手続き
工場あるいは施設等を建設する場合、以下の手続きが必要となる。
(1)建設許可の取得
(2)戦略的環境作用報告書の作成→審査→承認→登録
(3)消火消防設計の承認取得(消火消防警察)
(4)事前災害基金への対応
13)チーフアカウンタントの任命
チーフアカウンタント任命日から10日以内に税務当局に通知する必要がある。その場合、自社の社員として採用することも、社外に委託することも可能。初年度は配置する必要はない。
5、投資禁止分野、条件付き投資分野、出資割合比率の制限投資分野
1)投資禁止分野
麻薬販売、化学物質・鉱産物の販売、ワシントン条約に規定された動植物に関する販売、売春、人身や人体の一部の販売、人間の無性生殖にかかわる事業、爆竹の販売など
2)主な条件付き投資分野
警備・消防、質屋、債権回収、弁護士業、会計税務、金融、保険、証券、軍備・軍儒品に関わる経営、マッサージサービスなど
3)外資の出資制限比率がある投資分野
(1)基本通信事業サービス
インフラ網を待たないサービス 65%以下 インフラ網を持つサービス 49%以下
(2)仮想プライベートネットワーク(VPN)サービス
インフラ網を持たないサービス 70%以下 インフラ網を持つサービス 49%以下
(3)付加価値サービス 電子メール、直接通信/データベースからの情報取得アクセス、電子データ交換など
インフラ網を持たないサービス 65%以下 インフラ網を持つサービス 50%以下
(4)映画制作、映画配給サービス 51%以下
(5)電子娯楽事業 49%以下
(6)海上運送サービス (国内輸送を除く旅客運搬、国内輸送を除く貨物運搬サービスなど) 49%以下
(7)内陸水路における運送サービス 49%以下
(8)鉄道輸送サービス 49%以下
(9)道路運送サービス 旅客運搬 49%以下、貨物運搬 51%以下
(10)コンテナ積降サービス 50%以下
(11)農業、狩猟及び林業の関連サービス 51%以下
4)出資割合の規制はないがローカル企業との合弁が必要な投資分野
広告サービス、旅行及び観光ツアー実施サービス、通関サービスなど
6、投資審査が必要な投資分野
1)国会の承認が必要な投資分野
(1)環境に多大な影響を与える、あるいは可能性がある投資分野
例: 原子力など
(2)広大な面積を利用し、土地使用目的の変更する要する事業
(3)多数の住民移住が伴う事業案件など
2)首相の承認が必要な投資分野
(1)空港建設、港湾建設、石油採掘、キャンブル・カジノ、タバコの生産、工業団地開発、ゴルフ場開発・経営
(2)5兆VND以上の資本投資の事業
(3)ネットワークインフラの通信事業、マスメディアの外資経営など
(4)法規に基づく政府首相の投資方針決定案件など
3)地域の人民委員会の承認が必要な投資分野
(1)国家より土地を交付・賃貸される案件
(2)関連法に基づく技術移転が制限された技術を使用する案件
7、優先投資分野と優先投資地域
これらに該当する場合、いくつかのインセンティブがある。税率の優遇、適用期間、免除期間の優遇をはじめ、固定資産税の免除、土地リース料の免除の場合もある。
1)優先投資分野
投資優遇分野は、「投資特別奨励分野」と「投資奨励分野」に分かれている。
(1)投資特別奨励分野、投資奨励分野に分類される主な事業
・ハイテク技術、情報技術、裾野産業、(特別奨励分野のみに分類)
・科学技術、電子、機械、素材の生産、情報技術(奨励分野のみに分類)
・農業(事業内容ごとに特別奨励分野、奨励分野に分類)
・環境保護、インフラ建設(事業内容ごとに特別奨励分野、奨励分野に分類)
・教育(奨励分野のみに分類)
・文化、社会、スポーツ、医療など(事業内容ごとに特別奨励分野、奨励分野に分類)
2)優先投資地域
投資法とその施行細則を定めた政令により投資優遇地域は、「特別に困難な経済・社会条件の地域」と「困難な経済・社会条件の地域」に分かれている。
以上